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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

京丸の所在地

しかしその時見物席のほうから、どよめく人々の声が聞こえ、こっちへ走ってくる足の音がし、楽屋へ何者か飛び込んで来た。

「お前は君江! うーむ、竹太郎も!」

京丸の所在地

飛び込んで来たのは桃ノ井兵馬で、この結末は簡単であった。女房の君江の前へすわると、

「お前の父親武左衛門殿を、殺害したのはこの己だ、己はお前には父の仇だ! さあこの刀で怨みを晴らせ」と、刀を抜くと桃ノ井兵馬は、君江へ渡して討たれようとした。が、君江は発狂していた。で、ただぼう然とみつめてばかりいた。そこで兵馬はいったそうである。「親の敵ではあるけれども、お前にとっては己は良人だ。まさか討つことはできないだろう。……よしよしこうして討たれよう」――抜き身の柄を君江に持たせ、手を持ち添えて自分から、兵馬は切っ先を胸もと深く、突き込んでこの世を辞したそうである。

「竹太郎を頼む! これだけは頼む! 死に場所を得た! せめてもの慰め!」これが最後の言葉であったそうな。

しかるにこのころ千代古屋では、お粂とそうして園子との間に、こういうしおらしいすがすがしい話が取り交わされていたそうである。

「おうわさは承わっておりました。