轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
手あたり次第に、そのうちの一つを楽譜台の上にひろげ、軽く指を走らせてみる。練習不足はてきめんにこたえたけれども、次第に、一音が一音をひとりでに呼びさます、あの無我の境にひきいれられる。
と、不意に、彼女はひく手を止めてうしろを振り返る。
「トムちやん、もうねむいでしよう?」
祖母の肩に寄りかゝるようにして絵本にながめ入つている国民学校二年生のモトムは、
「うゝん、ちつともねむくない。ボク、じつと聞いてるんじやないか」
この返事はちよつと大人をたじたじとさせた。
「ほんと?」
と、康子は、それだけ言つて、また続ける。
義妹の百々子は、こうしてあによめにピヤノをひくようにすゝめはしたものゝ、さて、これが自分なら、おいそれとその気にはなれまいと考えていた。このことに限らず、「とくなたちだわ」と、自分とひきくらべてそう思うことはたび/\だが、これは性質の違いでどうにもならぬことゝきめている。
アパッショナタの荒れ狂うような響きが部屋をふるわせていた。
しゆうとの乃婦は、そつと両手で耳をおさえながら、「やれ、やれ、あんなに乱暴にひいてもピヤノはいたまないのかしら」