轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
こゝで夫の指にぐつと力がはいり、彼女の手はしびれるように痛かつた。彼女は何か言おうとして、くちびるを動かしたが、そのまゝ何も言わなかつた。
「まあ、おれの言うことだけ聞いて、意見があつたら言え。いゝか、おれはなあ、康子、日本が負けたことは、そんなに恥じじやないと思う。堂々と戦つて堂々と負けたのならだよ。しかし、おれは早くから軍職に身をさゝげたものゝ一人として、こんなことは言えた義理じやないが、今度の戦争ばかりは、堂々と戦つたと言いきれんのだ。なぜかと言えば、たとえ形式は天皇陛下の御命令ということになつていても、実は、軍隊というものが起つべき時に起つておらん。軍隊が起つべき時とは、軍隊が起たなければどうにもならんときをいうのだ。その時こそは、たとえ勝算なしと見ても、やるだけやるんだ。運を天にまかせるのもいゝ。しかしだよ、あらゆる点からみて、まだ/\武力に訴えなくてもすむ場合、或は、武力に訴えざるを得ないようになつた原因が、他のすべての力において故に劣つているという、そのことにある場合、軍隊を動かすことは愚の骨張だ」
言葉がしばらく途切れる。
十
「うん、愚の骨張だ……」