轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
七
こんな会話をつゞけているうちに、松川の流れがもう天竜にそゝごうという河口の砂浜にさしかかつた。そこから小みちが左右に分れて、一方はI市の南側をまわつてE村に、一方は広い堤防の上に出てM村の八幡という小駅に通じていた。
北原ミユキはその駅から電車に乗るつもりであつた。が、市ノ瀬牧人は、もうこゝからは道もいいし、自転車の後へ乗せていつてやると言う。どうしたものかと迷つた末、
「あなたさえよければ……」
と、彼女は市ノ瀬牧人の背につかまつた。
「なあ、市ノ瀬さん、あのひとの作つた詩、どれか覚えておいでる、ぼんやりでもなんでも……」
彼女は、なにを思つたか、こう問いかける。
「さあ、そいつは困つた。ひとつも覚えとらん」
「一行も……? 一句も?」
「待つてくれ、思いだすから……」
「ふゝゝ、わたしのこと歌つた詩があるんだに……」
七
――わたしのこと歌つた詩があるんだに、と、北原ミユキは、首をちゞめるかつこうで、市ノ瀬牧人の肩ごしにやつたのはいゝが、うふゝゝと、こみあげる笑いをとめようとして、手に力がはいる。
「そりやそうだろう。詩人が恋愛を歌うのはあたり前だ。おい、笑つちやあぶないよ」