轻松读懂日语经典作品
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ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
「さ、わたしひとりで歩くから、かまわずに行つてちようだい」
と、言つた。
「どうして? まだだいぶあるに」
「いゝから、先へ行つてちようだい。ひとりでぶら/\帰りたいの」
「わしの言つたことが気に入らなんだ?」
「うゝん、ほんとはありがたいのよ。でも、急にひとりになりたくなつたの。あなたがいると、わたし、よけいなことばつかり言うから……」
「いゝじやないか、なにを言つたつて……。相手がわしなら罪はないさ。ほんとのところ、先生と話をしてると、張合いがあつていゝだ」
「そうかしら? わたし、市ノ瀬さんにはなんでも勝手なこと言えるからだわ。そういうお友達はめつたにないもの。でもね、市ノ瀬さん、わたし、もうこの村にながくはいないわ」
「学校をやめてどうするの、いつたい?」
「どうするつて、どうもしないわ。たゞこうしているより、どこへでも行きたいところへ行けたら、気がまぎれると思うの」
「だから、どこへ行つて何をするつてあてでもあるの?」
「ない。ありつこないわ。むろん家へなんぞ帰りたくないし……」
「わからないなあ。それじやまるで、放浪じやないか」
「そう、そうよ、放浪よ、放浪の旅よ」