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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1931(昭和6)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 页
ぽんと、土蓋をして、粘土の目塗りをした上に、僅かな火口だけを開けておいた。
郷左衛門は、玉枝や主水と並んで、一同のうしろでその様子を眺めていたが、まず、これでよかったというように頷いて――
「作兵衛、すぐに火を入れい」
と命じた。
「まだちッとべい、早うがすよ」
「火入れにも時刻があるのか」
「へい。未の刻に火入れをして、暁方の六刻に、竈開けをすることに、何十年もの間極っているんでがす。小屋のめえに砂時計があるだから、それを見ていておくんなさい」
「未の刻か。では、もう半刻ほどだな」
「その間に、茶でも入れますべえ」
作兵衛は小屋の中から藁筵を出して、見晴らしの佳い場所に、それを敷いた。
「これや絶景だ、酒が欲しいな」
と、主水は口を辷らしたが、父の顔いろを惧れるように、
「いや渋茶でもいい。おい、一同、ここへ参って休息せい。ご苦労だったな」
玉枝はうしろを向いて、乱れた髪を梳いたり、腰紐を締め直したりしていたが、やがて、容を改めて、
「それではご家老様、これで安心いたしましたから、こんどはほんとに出立いたします」
と、挨拶をし直した。
郷左衛門はふり向いて、
「まあもう少し休んで参ってはどうだ。