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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1931(昭和6)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 页
彼女らの巣
と、言った。
が――女はまだ、疑い深く、
「では、私の見ている前で、二重箱にして、荷造りして貰いましょうか」
「お易いことでございます。――これよ、誰かここへ来て、荷箱を造っておくれ」
耀蔵が手をたたくと、ほかの者が、彼女の見ている前で、外箱を造り、二重に入れて、桐油紙づつみに縄をかけた。
それへ――
山城国四明ヶ岳含月荘御内、大村郷左衛門様
こう書いた送り状をベタリと糊で貼った。
「これで宜しゅうございましょうか。これよりはもう厳重にいたしようがありませんが」
「結構です」
と、女は初めて、安心したように頷いて、受取書と為替料とを引き換えに出て行った。
女の姿が、店の外へ消えるとすぐ、
「しめた」
と、耀蔵は、それを掴んで、先刻から店土蔵の蔭に、首尾いかにと、息をころして覗いていた主人の佐渡平の前へ、駈けて来た。
「これだ! 佐渡平」
「ほう、その小箱で」
「うまく奪ってやった。もうしめたものだ。この中には、櫓下で殺された柳橋のお半の小指がはいっているのだ」
「どうしてそれが、前から、お分りでしたか」
「老先生のご明察、おれにも分らぬ。あの玉枝が、小指のはいった小箱を持って、この店へ、荷為替を頼みに来るということを、ちゃんと、見抜いて俺を差向けられたんだから、まるで、神のようだ」