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ろうごくのはなよめ
牢獄の花嫁
吉川 英治
「キング」大日本雄辯會講談社、1931(昭和6)年1月~12月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 162,213 字 · 325 页
「そうだ! 死んでたまるものか。――だが貴様が生きているとは思わなかった。イヤ、俺さえ助かったのが夢みたいだ」
「何を隠そう、今だから言うが、実は拙者は、この春、単身この含月荘へ乗りこんで、見事に大村父子や玉枝の秘密をつかんだのだ」
「ウム、ではここの先陣は、貴様だったのか」
「ところが、かえって、悪人ばらの陥穽に墜ちて、この炭焼小屋の竈の中に抛り込まれて、彼奴等の眼前で、蒸焼きにされてしまうところだった。――それをここにいる作兵衛が、際どい瞬間に、拙者の体を、竈から出して、人間の身代りに、この小屋に飼われていた猿を抛りこんで火を放けたのだ。猿が、中で暴れるのを、俺が苦悶するものと思って、彼奴等は、凱歌をあげて引き揚げた。それから後、おれはこの小屋に、樵夫となって同居しながら、含月荘の探索をつづけていた……」
「だが、どうして、老先生の百日の期限のことまで、分ったのか」
「江戸の事情は、また審さに、問い糺す人間が、この小屋へ戻って来たのだ。今、それにも引き会わせるから、こっちへ来い」
黄門公下山
加山は昂奮して、疲労も何も忘れていた。
八弥と作兵衛爺の後に尾いて、薪小屋の中へはいってゆくと、そこに、一人の男が、後ろ手に縛りつけられていた。