轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
よあけのつじ
夜明けの辻
山本 周五郎
「新国民」1940(昭和15)年12月~1941(昭和16)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,801 字 · 86 页
六の三
よく戻ったとも云わず、無事を喜ぶ色も表には見せなかった。一刻前に出た子を迎えるように、常と少しも変らぬ態度で、すぐに母子三人の食膳に向った。
それが三人揃って向う最後の食膳だということは、母親にも佐和にも、伊兵衛にもよく分っていた。けれども『最後』という意味は『終り』ではない。新しい出発のための、旧いものと訣別するための『最後』である。この家族の上にはもう以前のようなかたちでは平和は訪れないだろう。終ることのない困難との闘いが始るのだ。その意味からすれば最後でもあり、同時に新しい出発への最初の食膳だとも云えた。
食事が終って、佐和が片付けに立つと、母の喜和は伊兵衛を仏壇の前へ伴った。
「ここへお坐り、母からひと言だけ云っておくことがあります」
「はい」
伊兵衛は端座した……喜和はしばらく黙って我子の面を見ていたが、やがて静かな、けれど力の籠った声で云った。
「あなたがこれからどういう道へ進んでゆくか、母はよく知っています……けれど、さっきあなたは佐和に『これから世間全体を敵として働く』と云っておいでだった」
「はい、そう申しました」
「違います。それはあなたの考え違いです。