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よあけのつじ

夜明けの辻

山本 周五郎

「新国民」1940(昭和15)年12月~1941(昭和16)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,801 字 · 86 页

青空文庫

二の一

彼がこの危険にどう処するか、それは大弐がいちばんよく知っている……それで多少の不安を残しながら、大弐は裸になった櫟林の奥へ、なるべく足跡を残さぬようにしながらはいって行った。

東寿のかんは的中した。

間もなく道の上に、合羽も笠も雪まみれになった人影が、一つ、二つひどく先を急ぐようすで、七人までやって来るのが見えた……彼らは権現平へかかるとともに、こっちへ向いて立っている東寿を認めた。

「……盲無念だ」

先頭にいる一人が云った。

その声調は同伴者たちに一様の戦慄を与えた。覚悟して来たことはみんなの眼に現れている。しかし盲無念だと云われたせつな、七人は一様に身震いをした――しかし次の瞬間、先頭にいた一人が合羽と笠を脱捨てた。

「近くにいる、逃すな」

おうと云いざまみんな即座に合羽と笠とを捨てた。下は袴の股立を取り、汗止め襷がけの充分な身拵えである。

東寿も静かに雨具を脱っていた。

両方なにも云わなかった……そして三度、やっぱり先頭にいた武士の一人が、

「盲無念は拙者が引受けた。大弐を捜せ」

そう叫びながら突進した。

二の一

「待て、ちょっと待て」

伊兵衛は先へ行く仲間を呼止めた。