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よあけのつじ
夜明けの辻
山本 周五郎
「新国民」1940(昭和15)年12月~1941(昭和16)年5月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,801 字 · 86 页
五の四
「理由があるのか」
五の四
「耻を話さなければ分らない」
道之進はふと眼を伏せながら云った。
「貴公にもこれまで話したことはないが、拙者の母は、拙者の立身出世ということを第一に考えているひとだ。そのためには自分の身を殺すこともいとわぬし、どんなことでもする覚悟でいる」
「佐和を妻にしては立身の妨げになるとでもいうのか」
「打明けて云えばそれだ。母はこの縁談のまえから、江戸詰の年寄役平賀準曹どのの娘と話を進めていたのだ。それがなかなかうまく運ばないうち、拙者のたっての望みで佐和どのとの話をいちおう承知した……ところが、つい最近になって、こんどは平賀のほうからぜひといって話を蒸し返してきたのだという」
「それだけの理由で、佐和との話を破約しようというのか」
「いや、それは母の意志がそうだというだけで、拙者はなにも破約するとはいわぬ」
「しかし、津田どのへ申入れたことは知っているのだろう……知らないのか」
「知っている。母の意志でどうにもしようがなかったのだ。しかし拙者としては、国老なり貴公のほうから拒まれるのは必定と思っていたから、そのうえで母を説得しようと」
「できなかったらどうする。