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よあけのつじ

夜明けの辻

山本 周五郎

「新国民」1940(昭和15)年12月~1941(昭和16)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,801 字 · 86 页

青空文庫

四の三

「話があるんだ、外へ出よう」

「いや放せ」

十郎兵衛は一歩退いた。

「我々が貴公の助勢に来たのは事実だ。しかしそれは第二、目的は山県大弐にある。お家の禍根を断つために彼を斬らなくてはならん」

「それは初めからおれが引受けている。いいからおれに任せろ」

四の三

「功刀、貴公まるめられたな」

十郎兵衛の眼がきらりと光った。

「我々は貴公が傷つき、雪の上に倒れている姿を想像して来たところが、貴公は宿の丹前を着て納っているし、どうやら大弐を斬る考えも無くなったようすだ……しかし我々は退かんぞ!」

「おれがまるめられたかどうかはべつとして、考えの変ったことだけはたしかだ。とにかくここはいちおう引取ってくれ。仔細はあとで話すから」

「いや退かぬ。貴公こそ退け」

十郎兵衛は左手で大剣の鯉口を切った。

「山県大弐はお家を危くする、我々はお家の禍を未然に防ぐのだ。邪魔をすると貴公とて容赦はない」

「待て抜くな紙屋」

伊兵衛は手をあげて叫んだ。

「おれと貴公たちとなんの要があって斬合うんだ。山県どのがお家の禍根だと、貴公に云ったのはこの功刀だ。そのおれが改めて云う。山県どのに手を出すな。