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よあけのつじ

夜明けの辻

山本 周五郎

「新国民」1940(昭和15)年12月~1941(昭和16)年5月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 42,801 字 · 86 页

青空文庫

四の一

「あのお二人のようすは分りませんの」

「分りました」

十郎兵衛は暗然と声をひそめて云った。

「お気の毒ですが……どうやら返討になったらしいのです。四人の死体と一緒に、崇福寺へ運ばれたのをたしかめましたから」

それでは兄は大弐を追って行ったに違いない。佐和は眼に見えるような気がした。

「とにかく我々は追いかけます。ここへはもう誰も来ないでしょう。久馬には安心するように云っておいてください……ではみんな」

五人とともに、紙屋十郎兵衛は雪を冒して出て行った。佐和はそれを見送りながら神に祈るような気持で呟いた。

――どうぞ間に合いますように、どうぞ兄が無事で戻りますように。

四の一

「東寿、待て、待て」

大弐の声がした。

「降りかかる火は防がなければならぬ。しかしこっちから仕掛けてはならんぞ」

「しかし先生、こやつも刺客の片割れです」

東寿の小剣は伊兵衛の胸元を覘ったまま動かない。大弐は大股に戻って来た。

「許さぬ、刀をひけ東寿」

「…………」

「刀をひけと云うに」

東寿はそっと右足を引き、構えていた小剣を下した。大弐は雪明りにじっと伊兵衛のほうを見やった。

そして力の籠った声で静かに、