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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

「素晴らしい美人でございますよ。たとえば吉祥天女様のようで」

「いやいやそうではありますまい」

いよいよ金兵衛は面白くなった。で、揶揄的になろうとする、そういう心持ちを苦心しておさえて、ますます加工的に真面目顔をしたが、

「吉祥天女様というような、仏くさいお方ではありますまい。松浦佐用姫様というような、仇っぽい色っぽいお方のはずで」

「はいはいそうでございますとも、佐用姫様のように仇っぽい女で」

油をかけられていることも知らずに、鴫丸という男は嬉しそうに、それこそ真面目に答えるのであった。

それがどうにも金兵衛にとっては、面白くもあればおかしくもある。で、いよいよ図に乗った口調で、

「やつがれの思うところによれば、そのお妻さんという女太夫さんは、佐用姫様のように色っぽいと一緒に、佐用姫様のように操が正しいはずで」

すると片耳の鴫丸という男は、うなだれて足もとを睨みつけた。なんとなく悄気たようすである。

「おや」と金兵衛は意外に思ったが、揶揄を止めようとはしなかった。「で、やつがれの思惑によれば、お前さん一人だけを大切に守って、決してほかへは仇し男などは、お妻太夫さんはこしらえないはずで」