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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
、だいそれた仕事はさせませんて。というのはそのうちにこの私が、腕に撚りをかけて秘密を探って一切合財をあばき立てて、一網打尽に引っ捕えて、獄門台へかけるという意味なので。ナーニわけはありませんよ。いと易いことでございますよ。それにあらかた今日までに、おおよそのところは調べ上げました。ただ私といたしましては、細かい雑魚などはどうでもよい、大きな鯨をにがしたくないので。それで今まで大事をとって、十手捕り縄をひらめかさなかったまで。……がそろそろひらめかしますよ。というのは鯨の居場所が、ほぼ見当がつきましたからで。で、とっておさえますよ。それもね、居場所といったところで、遠い所じゃアございません。鼻の先なのでございますよ、実は今夜も鯨の居場所を、それとなく探りに来たというもので。へいへいこれから参じます。いや全く悪い鯨で、三宅島の海の底のあたりに、死んで沈んでおればよいのに、フラフラと大江戸へ泳いで来て、町の真ん中に頑張って、いかめしい屋敷に囲まれて、住んでいるのでござりますからなあ。眼障りでしかたがございませんよ。で、生捕ってしまいますよ。この鯨さえ生捕ってしまえばたとえばヤットーの先生のようないわば雑魚のような連中は、自然と自滅をいたします。