轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
庭が明るくて健康そうだのに、部屋の中の薄暗くて陰気なことは! しかしそういう薄暗さの中に、朱塗りの衣桁が立ててあって、「連歌盗人」の都雅な衣裳が、無造作に掛けられてあるところは、古風で美しい光景であった。その衣桁の足もとのあたりに、幾個かの箱が置いてあったが、面を入れておく箱なのであった。一つの箱の蓋が開いている、箱の底に深々と「泣尼」の面が、上向きに一面置かれてあったが、活きているような上作で、虚の眼が天井を見上げている。鉾だの爼庖丁だの、小道具の類が床に近く、乱雑に投げ出されて置いてもあったが、薄暗い部屋の微光の中で、その太刀の鞘の一本が銀灰色におぼめいているのが、これまた古風に眺められた。で、部屋の中は狼藉としている。
何事かにわかに思い出して、衣裳や面や小道具の類を、一時に引き出して吟味しているうちに、酒が飲みたくなったので、それらの物をうっちゃったままで、酒のほうへかかったものであろう。
明るい庭のほうへ横顔を向けて、盃をなめていた主人の嘉門は、ヒョイとばかりに腕を伸ばすと、黒塗りの膳の向こう側の、畳の上へ盃を置いたが、「太郎冠者殿まず一杯、ご相伴をなされ、ご相伴をなされ」