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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

そうして公卿衆方に仰せられるそうで、『礼楽式典叙任叙勲、そういう方面へひたすらに、ご研究をお向けなさるがよろしい。兵備や政治は一切合財、幕府へおまかせなさるがよろしい。靖献遺言というような書物も、決してお読みになりませぬように』と。……先年竹内式部と申す処士が、王覇の説を唱えまして、禁裡様方の威福を計りましたところ、さっそく幕府方におかれましては、竹内様をはじめとして、徳大寺大納言様やその他の公卿衆に、弾圧をお加えなさいましたはずで。爾来徳大寺大納言様には、ご逼塞のごようすでございますなあ。ところが大納言様には以前からご贔屓にあずかっていまして、あるときにはわざわざ京師に召されまして、大納言様のご前におきまして、驚流のお狂言を幾番となく、ご覧に供しましたことがござりますよ。と、その時に大納言様は、私にこのように申されました。京師派のお狂言の和泉流には、もっとよろしいところがある。取って加味して一流を編めと。――で私は、和泉流を習いはじめたのでございますよ。すると先ほども申しました通りに、さっそくに邪魔がはいりましたので。いやはやどうにも不愉快の話で。