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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
どうやら三人は兄弟らしい。その中の二人は武士であったが、一人は前髪を立てたままの、十七、八歳の少年であった。
「私には兄上のご行動が、奔放に過ぎるように存ぜられます。不安で不安でなりませぬ。少しご注意くださいますよう。少なくも石置き場の空屋敷などへは、あまりお行きになりませぬよう、願わしいものに存じます」
誠実を面に現わして、諌めるようにそういったのは、その前髪の少年武士であった。
が、兄上と呼ばれた武士は、物にかかわらない性質と見えて、聞き入れるようすも見えなかった。
「一つの仕事を仕とげようとするには、相当の危険を冒さなければならない。あの石置き場の空屋敷などは、たいして危険な場所ではないよ。集まってくる連中のなかには、なかなか面白い手合いがある。ああいう手合いと交際るのも、必要があろうというものだよ。それより俺はお前へいいたい、お前こそもう少し元気を出して、ことを大胆に振る舞うがよい。お前の姉の鈴江などは、女ながらも心得たものだ、俺と行動を一にして、いつも俺を助けてくれる。空屋敷などへも一緒に行く。お前にもそのようになってほしい」
兄上と呼ばれた青年の武士は、このようにいくらかたしなめるようにいったが、憎く思っていったのではなくて、弟に覇気を持たせようとして、むしろ慈愛的にいったようであった。