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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
第二紋也が今日という今日俺らをひどい目に会わせたので、親分が俺らを気の毒がって、敵を取ってやろうというので、それでやっつけることに定めたってものさ。ああそうだよ、今夜やっつけることにな」得意そうに肩をそびやかすようにしたが、「親分は人情が厚いからなあ」
「全く親切で人情に厚いや」三人の中の一人がいった。「その親分だがやりそこなわなければよいが。全体幾人で出かけたんだろう?」
「四十人近くの人数だとよ」友吉の声に不安はなかった。「兄弟分の橋場の大将と、河岸の親分とがよろしいというので、一緒に行ってくれたそうだ」
「なるほど」と三人の中の一人がいった。「人数に不足はなさそうだな。……ところで火の手は上がらないかな」で、空を仰ぐように見た。
「そうさ、そろそろ上がるかもしれない。……少し急いで行くとしよう」
こうして四人は足を早めたが、まもなく佐久間町の二丁目の、土塀のいかめしい、植え込みの繁った、大門の厳重な屋根の前へ揃って姿を現わした。
「おいこの屋敷だ」
「さてどうする」
「四方へ散って見張ることにしよう」
「よかろう」
という声がしたかと思うと、友吉をはじめとして四人の男の姿が消えて見えなくなった。