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むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
――というのであちこちに巣食っていた夜鷹宿の主人が出張って来て、空地へ夜鷹宿を建てたところ、予期したように繁昌する。夜鷹宿が増築されたので、飲食店も数を増し、嫖客の数も数を増し、大いに盛るところから、それ地代などが騰貴して、縄張りなどの争いも起こる。と、元締めというようなものが、自然とできて世話をやいたり、頭をはねたりカスリを取ったり、うまいことをして贅をつくしたりする。
女を買って飲み食いをする――そればかりでは面白くない。勝負勝負! これに限る! というので賭博が行なわれる。そこで博徒が入り込んで来て、「これはなんだ、渡りをつけろ! ……テラ銭をよこせ!」などと嚇す。そんなことには驚かないで、「お前さん貸元になってください」「うむ、そうか、それもよかろう」――嚇しに来た人間が大将になって、駒箱を膝へ引き寄せて、「さあ客人張りなせえ」などといって商売をする。
こうして成立をとげたのが、水戸様石置き場空屋敷なのであるが、しかしどうして空屋敷などというのか? というのは簡単な理由からで、昼間はいっさい商売をしない。で建物という建物が、空屋のようにガランとしている。