轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

すわっていた床几から腰を上げて、赤い手甲を甲斐甲斐しくはめた、両の手を台の上へしっかりと突いて、肩を前のめりに前へ傾けて顔を紋也の顔へ差しつけ、物をいうごとに頬の後れ毛を、耳の後ろまでひるがえして、こう口説き立てたお粂のようすは、毒婦とも見れば妖婦とも見え、淫婦にさえも見えるのであった。

しかるにそういうお粂と対して、向かい合って腰をかけている、山県紋也の態度というものは冷然として静かであった。みつめている眼にもこれといって、怒りを宿しているのでもなければ、閉じている心にも表情がなく、先刻方眼瞼に現われていた痙攣さえも今はなかった。がもし誰かが注意をして紋也の膝の上を見やったならば、その膝の上で両の手の指を、握ったり放したり揉んだりして、心の内の烈しい動揺を、押さえつけているということを、見のがすことはできなかったであろう。紋也はお粂の言葉によって、事実は感情を嵐のように、掻き立てられ乱され荒らされたのであった。そうしてそれを見せまいとして、強い意志でおさえつけているのであった。

で、二人は黙っている。顔と顔とを突き合わせて、怨み合ってでもいるように、憎み合ってでもいるように、喰らい付きそうにして見合っている。