轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
すなわち実際の距離からいえば、たいして遠くはないのであった。ただ群衆がみなぎっている。露路を一杯にしてうねって来る。で平素の夜のように、早く走ることができないのであった。で、距離が遠く思われるのであった。
でもとうとう四つ辻まで来た。角々に立っている小さな私娼宿は、戸外のなんとない恐迫観念の、そのあおりをいつのまにか感じたものと見えて、門口に出して置いた行燈をしまい、門の戸をガタガタと閉てはじめていた。辻を中心にして三方の露路から、辻に向かって人の群れが、例によってうねって押し寄せて来た。いずれも口々につぶやいている。何をいっているのかはわからなかったが、その声々が一つになって一種の恐怖を醸し出してはいた。そうして群衆は足を早めて、今、金兵衛がたどって来た露路を、金兵衛と逆行して進み出した。
三方から群衆は集まったのである。辻は人間で泡立つように見えた。と、その人間の泡をくぐって、頭の大きな体の小さな、不具じみた男が喚きながら、両手を宙に打ち振ったり、両手で人の群れを押しひらいたりして、一つの露路へ進もうとしていたが、まもなく姿が見えなくなった。