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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

しかし佐久間町の入り口で、桃ノ井兵馬と闘って、体あたりをしてくれたのが失敗して、自分で自分をあおのけに倒して、大地で後脳を打ったのが一番に重い傷といえよう。で、気絶してしまった。その気絶した紋也をになって、ここの屋敷へ連れて来るや否や、ここの屋敷に詰めている、医師によって手あてを加えられ、さっきから寝かされているのであった。正気づくことはわかっていたが、一刻も早く正気づくようにと、お粂も鈴江も願っているのであった。

いかに紋也の憔悴したことか! 眼窩がくぼんで蔭をなしている。頬の肉がゲッソリと落ち込んで、頬骨が高く立っている。髷はほぐれて乱れた髪を、枕の外へはみ出させている。

この部屋ははたして広いのであろうか? 病める人の神経をいら立てないように、燭台の燈火を細ませているので、お粂と鈴江と寝ている紋也との、三人の姿を照らしているばかりで、部屋を一杯には照らしていなかった。燈火の光の圏内に水を張った小桶だの薬の壺だのがにぶく光って置いてある。

「お粂様、お休みなさりませ」ややあって鈴江はお粂にいった。

せめてもの介抱

「いえ」とお粂はすぐにいった。「妾がお看護いたします。