轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
むすめえんじゅつし
娘煙術師
国枝 史郎
「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页
であった。「俺といえどもそうなんだよ、痙攣れるような思い出ばかりが、頭の一所に残っているばかりで、そのほかのことは覚えていない。……しかし俺はどうしても求める! あの恍惚とした夢を求める!」
――間! しばらくは静かであった。燭台に丁字ができたと見える。燭台の燈火が細まって、部屋の中がおもむろに薄暗くなった。その薄暗い部屋の中で、絶望したような声が聞こえた。
「俺だけは出たい! この境地から出たい! そうして昔の俺になりたい!」胡坐をかいている武士のかたわらに、長々と身体をのばした姿で、横になっていた武士があったが、その武士が悲痛にそういったのであった。「四人の中では最初だった! 俺が一番最初だった! あの、痲痺と陶酔とを味わったのは!」ここでその武士は仰臥した。と、その富士型の秀でた額を、燭台の燈火が橙黄色に照らした。
「一人であるように願ったものだ! あの餌食になるものが、この俺一人であるようにと! ……ところがそこへお前たちが来た! そのほか毎晩外来のものが幾人となくやって来た! どんなに俺は嫉妬したか! どんなに俺は悩んだか! それこそ俺は発狂しそうだった! でも俺は待っていた! どうぞもう一度来るようにと! ああ、そうなのだよ、しかし今では諦めてしまった! 昔にかえりたい! この境地から出たい!」