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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

女はお粂であり男は金兵衛であった。

見て取るや兵馬は、「しめた!」と思った。

「藤井右門の遺児としては、お粂は己には怨敵だが、しかし己はあの女が好きだ。手に入れて自由にした上で、息の根を止めてやることにしよう」――で源兵衛にも旨を含め、見え隠れに二人の後をつけた。

が、袋井を通り抜けて、見付の駅路へはいった時、どうしたものか見失ってしまった。

で、今、街道を歩きながら、兵馬と源兵衛とは残念そうに、その事について話しているのであった。

紋服ではあるがあかじみた単衣を、二人ながらだらりと着流している。はいているたびも切れていれば、はいている雪駄も切れていた。歩くごとにかわいている地面から、バッバッとほこりが舞い上がって、裾をまみれさせた。

二人は先へたどって行く。

事実二人の思っているように、お粂と金兵衛とがこの街道を、京へ旅しているのであろうか。

二人は事実旅していた。

しかしこのころ二人の者は、見付の駅路の棒鼻のあたりを、話しながら先へ進んでいた。

「お許婚の園子様を、紋也様には京から呼び寄せ、京丸へこさせてお住居なさるという。当然のことではあろうけれど、私には悲しくも口惜しい。