轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

……子さえできている二人の仲を生木をさくように割かれたお方だ」

不意に君江が声を上げた。「小柄が一本、落ちております!」

「小柄?」と武士は手をのばしたが、「なんだ、こいつは、俺の小柄だ」それから寒いように笑ったが、「浪人ぐらしも久しくなる。刀の鞘などガタガタだ。で、今しがた落としたのだろうよ。……それはとにかくうっちゃってはおけない、届ける所へ届けずばなるまい。俺は一走り行って来る」

南条竹之助という若い武士が、こういいすてて走り去った、後には一つの死骸と一人の娘とが、凄く寂しく只に残った。と雨が降って来た。さっき方あがった雨である。ふたたび下ろして来たのである。死骸の上に降りかかる。君江は傘をひらいたが、死骸の上へおおいかざした。

「お気の毒なお父様、お可哀そうなお父様、君江はこんなに泣いております。成仏なすってくださいまし。そうしてどうぞこの妾を、お許しなすってくださいまし。妾は一人になりました。みよりのないものになりました。で、お父様がお嫌いでも、子まである仲でございますゆえ、竹之助様と一緒になりまする。お許しなすってくださいまし」

片手で傘の柄を握りしめて、片手をひらいて額へあてて拝むような形をしたが、泣きながら君江はいうのであった。