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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

の長者として、一藩の尊敬の的になられた妾のお父様が事もあろうに、みすぼらしい売卜者の姿として、所もあろうに夜の往来で、誰にともなく闇討ちにされて、このようにあえなく亡くなられようとは、妾には本当には思われません。その上に敵の手がかりはなく、怨みを晴らす術もない。成仏なすってくださいましと、どのように妾が申しましたところで、成仏なされてはくだされますまい。また妾にいたしましても、憎い敵を見つけ出して、一太刀なりと怨みませねば、この心が落ちつきませぬ。……どこかに手がかりはないものであろうか?」

闇をあてもなく見廻したが、雨や枝や葉を顫わせている藪畳が茂っているばかりであった。と、君江の心の中へ、ピカリとひらめくものがあった。で「小柄!」とつぶやいた。殺された父の死骸の横に、落ち散っていた小柄のことが、瞬間に思い出されたからである。

「でも、あの小柄は竹之助様が、自分の小柄だと仰せられた。では敵の小柄ではない」

で、君江は考え込んだ。と、にわかに身を固くした。闇の中で君江は眼を閉じた。

「あの竹之助様とお父様とは、婿舅でありながら、恐ろしいまでに不和であられた。