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むすめえんじゅつし

娘煙術師

国枝 史郎

「朝日新聞」1928(昭和3)年8月26日~1929(昭和4)年2月22日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 267,766 字 · 530 页

青空文庫

無名ノ捨訴状、捨文等有之、右認方全ク其方共ノ仕業ニ相聞エ、重科ノ者ニ付死罪申付ベキ者ニ候処、大弐、右門企ノ儀ハ、兵学雑談、或ハ堂上方ノ儀、其外恐入候不敬ノ雑談申散候ハ、其方共申立ヨリ相知レ候、大弐ハ死罪、右門儀ハ獄門罷成、御仕置相立候ニ付、不届ナガラ訴人ノ事故此処ヲ以テ、其方共助命申付、日本橋ニ於テ、三日晒ノ上、遠島之ヲ申付ル」

兵馬の口調は暗誦的であった。永らくの間心の中にあって、しばしば繰り返していた文章を、暗誦たというようなところがあった。

「これは私の父をはじめ、宮崎準曹、佐藤源太夫、禅僧霊宗に下されました、断罪の文にござります。つまり私の父などは、幕府のおためを存じまして、謀叛人企てを明らさまに、お訴えを致しました結果としてかえってお叱りを受けましたしだいで、逆しま事のようには存じますが、こういう結果になりましたのも山県大弐や藤井右門の、恐るべく憎き陰謀にその端を発しておりまする。しかるに大弐や右門なるものの、その陰謀の源泉は、三宅島において逝くなられましたはずの、あの恐るべき人物から流れ出ているはずにござります。したがって私にとりましては、三宅島において逝くなられたはずの、その恐るべき人物こそ、怨みの的にござります」