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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页
のない自慢にしていたものですが、今ではどうやら自棄半分、明日の命はわからないからといった風で、お相手をしながらこっちが悲しくなるような遊び方なんです、もう片方のお客さま方はまるで違います、芸妓などがそばにいようといまいとお構いなしで、イギリスだとかアメリカだとかオランダだとか、見も知らない国や異人のことをお話しなすったり、将軍さまの御政治ぶりから世の中をこうしなければならぬなどという、むずかしいことをむきになってやり合っていらっしゃる、中にはそんなことを云うのを口実にして酒と芸妓がおめあての人もいますけれど、お若いお客さまの方は大抵はそうやって真剣にやり合っていらっしゃるんです、こんなことって、あたしがこの商売に足をいれてから無いことでした、つまり遊びの世界までがまるっきり違って来たんですね」
「本当に、いろいろと変ってまいりました」
遊びの世界などというものは噂にも耳にしたことのない藤尾には、梅八の話の十分の一もわかりはしなかったが、世態の変遷の激しいということは、自分の身がその渦中をぬけて来たことで骨にしみるほど痛感している。そして、大助から聞かされた梅八の過去を思うと、彼女がいまどんな感慨のなかにいるかという事が察しられて、出来たら慰めの言葉をかけてやりたい、とさえ思った。