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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页
二
に依って変るわけはない、人間の心は絶えず惹き合うが、同時に反撥もし合う、こちらの考えが純粋でなければ、相手が応じてこないこともわかりきっている。……だが今は秀之進は父に会える、今の秀之進なら、父もじかに「父」の心をみせて呉れるにちがいない、かれはそう信じているのだ。
「それは幸いです、実は明日わたしも御屋敷へまいる用があるのです、よかったらご一緒にまいりましょう」
大助はそう云って再び団扇を取った。
二
明くる日、藩邸の校川を訪ねた。そしてもう馴染の狭い客間へ通されると、こんどは待たせずに宗兵衛が来た。
然し秀之進の期待は満たされなかった。宗兵衛の態度はあのときと変りがなく、こちらを見るまなざしにも、肩を張った身構えにも、近寄ることを許さない冷たさがあった。それは秀之進に限って示されるものではないだろう。多忙であり緊張した日常が、そういう姿勢を支えているのに違いない。それがわからない訳ではないけれども、こんどこそ直に「父」と対面できると思っていた秀之進にとっては、少なからぬ失望だった。
「水戸のようすを見たか」宗兵衛はこちらの挨拶を聞きながしにしてこう云った、「藤田先生にはお眼にかかれたか」