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しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页

青空文庫

二

しかしその心配はなかった。

「では失礼ですが」といって立った、「出掛けますので」

「そうか、では拙者も……」

梅田はうんと両手を伸ばし、大きなのびをしてから立って、会釈もせずにずんずんおのれの部屋へと去っていった。……秀之進は竹隈へでかけた。

二

「校川どのからの添書に、彰考館と弘道館の見学の便宜をはかるようにとあったが、いってみますか」

訪ねていって座に相対すとすぐ東湖がそういった。初めて訪ねたときと同じ、いちばん奥の、瓢兮歌の屏風のある部屋だった。あれから五六たび訪問しているが、いつも客が多くて、この部屋でゆっくり話す機会はなかったのである。

「ぜひそのうち御案内を願いたいと存じます」

「今日いってみるか」

「有難うございますが……今日は少し先生にうかがいたいことがございますので」

「…………」東湖はむっと口を結んだが、「理屈はごめんだよ」

「初めてうかがった時のお話が中途で切れたままですし、実は梅田さんからいろいろ聞かされたものですから」

「ああ、梅田氏はあんたと同じ宿になったそうだな」

「それでたびたびお説を聞くことになるのですが」

「元気いっぱいな頗る壮烈な意見をもっている、わたしは『頗る』