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しんちょうき

新潮記

山本 周五郎

「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页

青空文庫

梅八の軽侮をとりかえすのはこのときといった感じで、寒笑はひどくしたり顔に坐り直した、「先日お話しした例の四篇めでぴたりと行詰っちゃいましてね、どうにも想が動かない、てんで筋の運びがつかなくなってるんです」

「おかしいじゃないか」汗を流して、浴衣に着替えて出て来た大助は藤尾の淹れて出した茶を会釈して手にとり、さもうまそうに啜りながらいった、「おまえ書きたい骨はきまってるんだろう、話の筋は骨を生かすためだって今もそういったようだが、書きたいものがきまっていれば筋の運びなんかどうでもいいじゃないか」

「寒竹さんのは筋ばかりで骨がないんですからね」

梅八がまた口を※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)んだ。

「素人は黙ってて貰いてえ」

「さっきから素人をたいそう並べるようだが、おまえの小説は素人に読ませるんじゃあないのか」

「つまり、そこが悲しい」

「はっきりしろ、勿体ぶるからいうことがちぐはぐになるんだ、おまえは本が売れて金が取れればいいんだろう、そう泥を吐いちまえば楽じゃあないか、論語だの孝経なんぞと心にもないことをいうから梅八にやっつけられる、寒笑は寒笑でいいんだ、しっかりしろ」