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しんちょうき
新潮記
山本 周五郎
「北海道新聞」1943(昭和18)年6月12日~12月20日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 155,541 字 · 305 页
ひどく急いで来たものとみえ、押しぬぐうあとから汗がふつふつと湧きだしてくる。
「宗兵衛、なにごとだ」
「申上げます、かねて栗林御殿うちに隠れておりました大峰、矢田部の両名につき、お上御側近において在所を捜査しておりましたところ、今宵ひそかに御殿よりいずれかへ押送する模様にございます」
「そうか、……それでは不浄門を見張っておれと申して置いたが、いかんな」
「切手御門か、萩の御門、この二ついずれかと申すことでございます」
「ではすぐ知らせねばならぬ」
左近は高いこえで源十郎まいれと呼んだ。戸越源十郎という侍臣がすぐに来た。五尺そこそこの小男で右額に李ほどの瘤がある。「瘤の源十」といって、秀之進もよく知っている左近側近の名物男だった。
「そのほうすぐに栗林の不浄門へまいれ、その付近に水戸家の者がおる筈だ、その者たちに萩の門か切手門へまわれと申せ」
「さよう申せば相わかりましょうか」
源十郎がすべるように出てゆくと、秀之進がしずかに口を※(「插」でつくりの縦棒が下に突き抜けている、第4水準2-13-28)んだ。
「唯今のおはなし、仔細は存じませんが、不浄門から東御門(切手門)までは距離がございます、よろしければわたくし先に東御門へまいって見張りを仕りましょう」