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にっき
日記
宮本 百合子
23 一九三九年(昭和十四年)
N3 · 进阶 · 新字新假名 · 28,069 字 · 57 页
一月三十一日
もと日本間にあってちっとも活きなかった装飾棚などホールにおいて、いかにも美しい。上に私の真鍮のキャンドルスティックが飾ってあるのもよく調和している。これまでもてあつかったようにしてあったものが皆そうやって光って来て、心持よし。美的快感の一種。
○かえって大体記録よみ終る。
一月三十一日(火曜)
〔発信〕茶の間のエハガキを送る。スケッチは書画! で入れない由。
mの黒曜石のような眼。そこからほとばしる火花の美しさ。魅する力。やっと言葉をつづけるようであった。mの精神や情感の抑揚の活々していることは、実に独特の味であると思う。目を丸く四角くしたようなときの内容。愉快で陽気で笑いが近くにあるときの顔色。そのときのうなずきと瞬きかた。そしてきょうのような表現。年々に蓄えられてゆく我々夫婦の生活の内容。
○又風呂がくすぶって燃えぬ。出て見る。石炭はコークスのように軽くなって一杯つまっていて燃え立たない。煙が出ているかと思って煙突を見上げたら、月が出ていた。そして、ちっとも風がなくて早春らしい夜である。木々の芽立つ匂いをかぎながら しっとりとした夜を歩きまわって見たいような夜。