轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

やなぎばしものがたり

柳橋物語

山本 周五郎

前編「椿 創刊号」山本周五郎一人雑誌、1946(昭和21)年7月<br>中・後編「新青年」1949(昭和24)年1月~3月

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,300 字 · 202 页

青空文庫

おせんは寒いような気持におそわれた。これまでながいこと待っていたのに誰もあらわれず、もうこのままおちつくのだと思っていたが、こうして亡くなったひとの兄が来たとなると、もしかすればこの家を出てゆかなければならなくなるかもしれない、そんなことになったらどうしよう。なによりも先にそういう不安がわいてきたのであった。――ひきあわせが済むと、おたかはすぐに帰っていった。男はおせんに水を取らせて足を洗い、ぬいだ草鞋と足袋を外へ干してから上へあがって莨入をとり出した。どうするつもりだろう、おせんは、ますます強くなる不安のなかで、ともかくも夕餉の量を殖やし、乾魚を買いに走ったりした。男は、もともと無口なのか、食事が済むまで、殆んど口をきかなかった。頬の尖った髭の濃い顔には少しも表情がなく、くぼんだ眼だけが怖いように光っている、その眼でなんども部屋の中を見まわしたり、幸太郎の騒ぐのを、うるさそうに睨んだりするばかりだった。そんな客が珍しいのだろう、子供はじいたんじいたんと云って、まわらない舌で頻りに話しかけたり笑ってみせたりした。うっかりすると膝へ這いあがろうとするので、おせんは食事が終るとそうそう、厭がるのを負ってあと片付けをした。