轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
やなぎばしものがたり
柳橋物語
山本 周五郎
前編「椿 創刊号」山本周五郎一人雑誌、1946(昭和21)年7月<br>中・後編「新青年」1949(昭和24)年1月~3月
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 104,300 字 · 202 页
「そうなんですってよ、頭梁ってひとが庄吉さんの腕にすっかり惚れこんだんですって、お加代っていう娘さんも庄吉さんが好きだったって話でね」
おせんはちょっと立停った。しかしすぐ歩きだしながら、いま聞いた話がなにを意味するか考えてみた。うわのそらで聞いていたのである、もちろん言葉そのものはわかっているが、その意味は聞きながしていた。それはとうてい有り得ないことであったから。
――が、おせんはとつぜん額から白くなり、おたかの腕を掴んで立停った、おたかは吃驚して声をあげた。
「庄さんが、お嫁を貰ったんですって」
「放してお呉れな、痛いじゃないかおせんちゃん」
「本当のこと云って頂戴、本当のこと」
「痛いってば、ここをお放しよ」
「お願いよ、おばさん」おせんは縋りつくように云った、「――庄さんがお嫁を貰ったって、嘘でしょう、ねえ、そんなことがある筈はないもの、嘘でしょうおばさん、ねえ云って、そんなことは嘘だって」
「いって自分で訊いてみれば、いいじゃないの、あたしは知ってることしか知っちゃいないよ」
「そらごらんなさい嘘じゃないの」
こう云いながらおせんは歩きだした。きみ悪そうにおたかが去っていったことも、曲り角を通り越したことも知らず、茅町まで来てようやく我に返り、そこでなお暫く棒立ちになっていた。