轻读日语

轻松读懂日语经典作品

ja-reading.com

轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。

ひのとびら

火の扉

岸田 国士

「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页

青空文庫

「そんなこと言つたつて、その気にならんもんはしようがないじやないか。こいつは、ゴムぐつを買うようなわけにやいかんでなあ。わしは、はつきり言うと、好きで好きでたまらんていう相手でないともらわんに。そのかわし、これが好きとなつたら、向うがなんと云つても引つ張つてくるに。人のもんでもかまわんに。子供がおつたつて平気だに、そんなことは……」

いくぶん母親のほこ先をくじくつもりではあつたが、はたして、これは効き目があつた。ありすぎるほどあつた。母親は、しよんぼりと眼をふせ、やれ/\というように首をふつて、あとはもうなにも言わなかつた。

言葉のはずみとはいえ、彼が、「人のものでもかまわん、子供がおつても平気だ」と、まくしたてるとき、彼の眼の前には、むろん、井出康子のまぼろしが浮んでいた。

彼はぷいと座をたつて二階にあがる。本だなから手当り次第に翻訳の小説を引きぬく。読みはじめるが、面白くない。落ちついてそのなかにはいつていけないのである。

表へ飛びだしたくなつた。行くあては別にない。まだ七時をちよつとすぎたばかりである。日がながくなつた。どこかのやぶでうぐいすがないている。