轻松读懂日语经典作品
ja-reading.com
轻松读懂日语,轻松阅读日语。在线阅读日语经典作品。支持在阅读过程中显示假名、查询生词、翻译句子。
ひのとびら
火の扉
岸田 国士
「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日
N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页
そうひとりで占領した気ならんでおくれない」
この抗議は、北原ミユキを吹きださせた。
「あら、いやだ。あたしが大好きじやどうして……?」
と、あとは眼つきで、その意味をたしかめようとした。
「…………」
市ノ瀬は、無言のまゝ、片ほおに微笑をうかべていたが、やがて、
「なに、先生があの奥さんを大好きなのはいゝさ。だれに遠慮することもいらんさ。先生とあの奥さんとが仲善しだつていうことは、わしもちやんと知つとるし、みんな知つとるこつた。それはそれでいゝに。しかし、先生が、あんまり大好きだ、大好きだつていうと、すこし変な気のするもんがおりはせんかな」
「だれな、それは?」
「さあ、だれだろう?」
「ふん、まさかだんなさまでもなかろうに」
と、市ノ瀬牧人は、それにかまわず、
「わしは、たつた一度あの奥さんと口をきいたきりだが、たつた一度きり口をきいて、もうどうしても忘れられんという女性は、おそらくわしの生涯であの奥さん一人きりだと思うとるに」
こういう彼の口調があまりに荘重なので、北原ミユキは、もう笑うのをやめはしたが、
「市ノ瀬さん、あんた、気はたしかでおありる? そんなことつてあるかしら?」