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ひのとびら

火の扉

岸田 国士

「時事新報」1944(昭和19)年1月1日~7日、1月9日~2月25日、3月1日~3月5日、3月7日~3月8日、3月11日~3月15日、3月18日~3月21日、3月25日、3月27日~3月29日、4月1日~4月3日、4月7日~4月11日、4月15日~4月19日、4月24日~5月4日、5月6日~5月9日、5月13日~5月17日、5月20日、5月22日~5月24日、5月27日~5月31日、6月3日~6月8日、6月12日~6月17日、6月19日~6月22日、6月24日~6月26日、6月28日

N2 · 挑战 · 新字新假名 · 129,467 字 · 257 页

青空文庫

息子のモトムを学校へ送りだして、朝のかたづけものを終つたあとである。

「ご親切はほんとにありがたいんですけれども、あたしすこし考えがあつて、子供と二人きりでなんとかやつていきたいんですの」

「それがですよ、ねえさん、時機が時機ならぼくも反対しませんよ。今はとても女一人で生活をたてるなんていうことは、まつたく空想ですよ。兄貴の遺書には、なるほど、ねえさんは自由な行動をとれとありました。その意味が、ぼくにはよくわからないんですが、これは察するところ、ねえさんの立場を考えてですよ、親せきの無理解な強制をあくまでもしりぞけるという、含みをもたせた一言だと思うんです。母と百々子のことをぼくに面倒をみろと言つてあるのも、そのためじやないですか。それはむろん、兄貴に言われなくつたつて、ぼくの当然の義務ですから、ちつとも文句はないんですが、逆に、ねえさんとモトムのことは、兄貴に頼まれなければ知らん顔ができるかと言えば、決してそんなことはできない。それも生活の問題がなければ、別にぼくなんかの立入る筋じやないと思うけれども、現に……」

「えゝ、ですから、そういうご心配をいつさいかけないようにやつてごらんにいれます。