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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁

青空文庫

「逃げもしたいが」

「冗談じゃありません。あなたを、豊田の主とも、土地の親柱とも頼んで、ここへ眷族をつれて寄り合った多くの者、また、たくさんな郷の者を、どうにもなれと、振り捨てて、逃げられますか」

そこへ、守谷に住んでいる御厨三郎将頼も、馬にムチを打って、駈けつけて来た。

将頼は、下の弟の四郎将平よりは、気もやさしく、兄の将門よりも、めったに、激さない性である。――が、その将頼すら、もう武装して、矢を負い、弓をひっ抱えていた。

「良兼を大将に、二千以上の大兵が、子飼の渡しをさして、続々と、向かって来るそうです。――良兼、良正たちは、去年の敗れに懲りて、このたびこそと、軍備作戦をねっているとかいう事は、夙くから聞えていましたが――やはり本当だったとみえます」

三郎将頼は、息をはずませて、いった後、

「もし、子飼の渡しを、彼らに断たれると、こちらは、豊由一郡に、追いつめられ、戦うに、不利となります。兄者人、すぐ駈け向ってください。一刻を、争いましょうぞ」

「……ちいっ。ぜひもない」

将門も、肚をきめた。

しかし、彼の命令を待つまでもなく、あたりにいた郎党は、館、柵内の味方へむかって、事態をどなり歩いていたので、馬を曳き出し、武器を押っとり、前後して、甲冑の奔流が、諸門から往来へ、溢れ出ていた。