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たいらのまさかど
平の将門
吉川 英治
線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。
N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁
将門も、大急ぎで、具足を身に着けた。その間とて、彼の心のどこかでは、
(いやだなあ、血みどろは、見たくないが……)
と、しきりに疼く弱気があった。妻の白い顔や、乳のみ子が、眼にあって、いつになく、鎧の重さが、身にこたえた。
その間に、五郎将文、六郎将武なども、大結ノ牧や、附近の邸から、駈けあわせ、またたくまに七、八百騎。
「子飼の渡し口へゆけ」
「子飼を守れ」
と、まっ黒に、駈け出した。
後から後から、なお駈け続く兵も多い。曠野の兵は、その頃まだ、みな「半農半武」か、「半農半猟」か、とにかく、館の郎党から散在している地侍にいたるまで、純然たる武士という者は一般にごく少なかったようである。「今昔物語」などには、“合戦ヲモツテ、業トナス――”人種のようには書いてあるが、匪賊のように、それのみが目的ではない。武門といえど、荘園や開墾や、土の経済の上に、立っていた。それだけにまた、土の争奪には、血を惜しまず、骨肉の相剋も、辞さなかったわけでもある。
こういう兵団。こういう原始的な武力。――従ってまだ軍律や、秩序ある陣法もなく、ただ極めて幼稚な作戦知識と、大ざっぱな階級別とがあるだけだった。