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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁

青空文庫

見ると、その中に、今朝旅舎で別れた弾正忠定遠も、ぼんやりした顔をして佇んでいる。

「やあ、弾正忠殿。どうなすったのです」

「お。為憲どのか。合戦のもようは、どうなのです」

「合戦。そんなものは、どこにも起ってはおりませぬよ。それよりも、御出発はどうなされたので」

「いや、かくの如く、荷駄供人も旅装をさせて、宿は立っては来たのですが、途中、戦に巻き込まれては大変だと思うし、維茂どのも貞盛どのも、そこは保証の限りでない、危険は充分に考えられると、しきりにお引き留め下さるのでな」

「ははは。初めの驚きが大きかったので、父もちと狼狽しているのでしょう」

「街道は無事に行けましょうか」

「まだ一本の矢も射てはいません。明日の事は知れぬが、今宵は平穏です。もしお立ちを急ぐお心ならば、途中、安全な所まで、部下の兵を守りにつけて送らせましょう」

為憲にいわれてから、急に定遠は腹を極めた。両軍の矢交ぜを見ないうちに、何しろ、常陸を離れてしまうに限ると、気が急かれたのだ。

貞盛は、昼間から国庁の内にあって、維茂や府官の中に立ち交じり、いわゆる帷幕の内の助勢をしていた。本来、彼はここの吏ではないし、公にも、庁政に関われという任命は帯びているわけでもないから、官衙の内部に姿を現わして、国司へ助言したり指図がましい振舞いをなすなどという事は、