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たいらのまさかど

平の将門

吉川 英治

線上閱讀吉川 英治《平の将門(たいらのまさかど)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 232,193 字 · 463 頁

青空文庫

違法でもあるし、越権な沙汰だが、事態が事態なので、誰も怪しむ者はいない。

「弾正忠様には、やはり夜にかけても今のうちに、御出発になりたいと仰せられますが」

府官の一人が、維茂に知らせて来た。

貞盛も、聞いて、

「それは、物騒だが?」

と、ひき止めるつもりで、慌てて庁の庭へ出て来てみると、定遠はもう馬に乗って、従者に口輪を取らせていた。

「大丈夫ですよ。御心配はありません……」

そう告げたのは、出発して行く当人ではなく、側に見ていた為憲である。

「私の部下にいいつけて、途中まで、送らせますから」――と、父や貞盛の杞憂を笑っていうのだった。

ぜひなく、二人も、

「では、お気をつけて」

と、定遠の一行を、庁の門外まで、見送った。

すると、その夜も明けないうちに、弾正忠定遠とその随員を送って行った国庁の兵が、逃げ帰って来て、

「一大事です。途中、将門の兵に取囲まれ有無もいわせず、弾正忠様には、捕虜として、敵の手に奪われてしまいました。――その他の随員も、みな縄目をうけて、将門の陣中へ引っ立てられた様子に見えます」

と、意気地のない報告であった。

しかも、二十名も付けてやった兵のうち、帰って来たのは四、五名にすぎない。