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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁

青空文庫

小永井家は、旧家にしては親類も少なく、こんな時、打ち明けて力になってくれるほどの人もなかったのです。

しかし、平次の目算にも、とんだ思惑違いがありました。浪江を盗み出して、文五郎との祝言を妨げさえすれば、父鉄馬の命は大丈夫と思ったのは大違いで、多智多策の滝三郎は、

「小永井家の一人娘浪江は、乳兄妹の仲間半蔵と駆落をした」と言い触らし、半蔵や浪江を、動きの取れぬ羽目に追い込んだ上、三日経たないうちに、

――当主鉄馬は、娘の不始末を悲しむの余り卒中を起して死んだ――と発表したのでした。

間もなく、親類合議という形に拵え、甥の文五郎に、跡目相続を願い出ました。その手順はいかにも疾風迅雷的で、相手に息も吐かせません。

安祥旗本の立派な家柄と、祖先の手柄を細々と歎願書に書き添えたのですから、公儀もこれは、まず許す方に傾くでしょう。大名と違って、旗本の死後相続は、何でもないことではあり、それに弟の滝三郎では世間が許しませんが、その倅の文五郎となると、いくらか大目に見る心持になります。

「これは放っておけない」

銭形平次も今さら驚きましたが、自分の料簡一つでやった事で、この始末を笹野新三郎に持って行くわけにも行かず、また持って行ったところで、旗本の名家の相続問題に、町方与力などは嘴を容れられるわけもありません。