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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(五)金の鯉

野村 胡堂

線上閱讀野村 胡堂《銭形平次捕物控(五)金の鯉(ぜにがたへいじとりものひかえ)》,假名注音日語閱讀。JLPT N2,點詞查義。

N2 · 挑戰 · 新字新假名 · 136,062 字 · 276 頁

青空文庫

「八、帰ろうか」

それっきり外に出た平次。

「帰るんですか、親分」

物足りない八五郎の耳へ、

「八、今晩は命がけだよ」

そっと囁くのでした。

そこから湯島まで一と走り、山崎屋の裏口へ八を立たせた平次は、

「ここで見張っているがいい、誰でも構わないから飛出したら組み伏せろ」

そう言いおわると平次は、静かに、落着き払って表口から入って行きました。

「今晩は」

「おや、銭形の親分さん」

帳場へ迎えた専助の顔には、何の蟠りもありません。

「お藤は無事に帰りましたよ」

「ヘエ――、それはいい塩梅で」

「そして、何もかも打ち明けたぜ」

「えッ」

「御用ッ」

平次が飛びかかるのと、専助が算盤を取って身構えるのと一緒でした。

恐ろしい格闘が始まりました。二人の手から互に投げ出される銭、銭、銭――。

平次も幾つか顔へ叩き付けられましたが、手練の違いで、専助はとうとう力尽きて平次の膝の下に組伏せられます。

その時、裏口へよぼよぼと逃出した物の影のような怪しい男。

「御用ッ」

ガラッ八はやり過してむずと組付きました。

*

「親分、解らねえことばかりだ、絵解きをしておくんなさい」

山崎屋の専助、専左衛門親子を番所に引渡した帰り、ガラッ八は平次の浮かぬ顔を覗きました。