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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
――一生島で朽ち果てる積りなのが、たった三年で江戸へ帰ったのも何かの運、このまま安穏に暮せるものを、つまらない怨みや意気張りで、若い女一人を殺せば、今度は私も命がありません。恥かしい事ですが、急に命が惜しくなって、後をも見ずに逃げ帰り、友達の家で夜更けまで飲んだようなわけでございます。翌る日、弟が縛られたと聞いて、私の腑甲斐ないのに腹を立てて、新吉がやったのかしらと、一応は思いましたが、この男は生れ付きの善人で、気の弱い事この上なしですから、人を殺せるはずはありません。これには何か、深い仔細がございましょう。親分、旦那、どうぞ、もう一度調べ直して弟を許してやって下さいまし」
岩松の言葉には、もう掛引も偽もあろうとは思われません。それを聞いて一番驚いたのは、隅の方に蹲まっていた、縄付の新吉でした。
「兄さん、有難い。――兄さんのした事とばかり思い込んで、身に覚えのない罪を引受けたが、兄さんが潔白と判れば、もう心配することはない。親分、私は何にも存じません。あの晩兄の見幕が恐ろしかったので、私は臆病なようだが、兄に言われたとおり、本所へ逃げて行って、亥刻までは家へ帰るまいと思ったのでございます」