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ぜにがたへいじとりものひかえ
銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌
野村 胡堂
Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.
N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens
「たいしたことじゃない。これを見るがいい」
もう一度流れを飛越して来た八五郎の顔の前へ、平次は、竹竿の泥の中に突っ立っていた方を見せました。
泥で一と通り隠されておりますが、穴の中を覗くと、べッとり血潮。
「ホウ」
ガラッ八は蛸のような唇をしました。
もう一度家へ返ると、番頭の宗七を物蔭に呼出して、平次は静かに切出します。
「番頭さん、本当の事を話してくれ。でないと、とんでもない者に縄を掛けなきゃならない」
「ヘエ、ヘエ、どんな事でも申上げます」
宗七の臆病らしい顔には、何の作為があろうとも思えません。
「娘のお糸を嫁に欲しいと言ったのは誰だい」
「駒吉でございますよ、親分さん」
手代の駒吉とお糸の仲は、平次も気が付かないわけではありません。
「主人が生木を割いたというわけだな」
「ヘエ――」
「昨夜駒吉は店を空けたんじゃあるまいな」
「昨夜は風呂が立たなかったので、町風呂へ行ったようでございました。小半刻経って、戌刻(八時)過ぎになってから、いい心持に茹って帰って来ましたが」
「茹って?」
「ヘエ――、赤い顔をしておりました」
「それからもう一つ。店の金を費い込んで主人に叱られたというのは誰だい」