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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

なんという他愛のなさ。

「馬鹿野郎ッ、だからお前に番人を頼んだじゃないか。どこの世界に親の墓のある寺を間違える奴があるんだ」

「あッ、いけねえ」

「呆れ返った野郎だ」

平次はさすがに怒りましたが、今さらどうすることも出来ません。

「親分、あの宗太郎は弟と共謀なんで?」

「当り前よ、――が、待てよ、宗太郎はここを出る時、跛足を引いていたか」

「え、あの跛は生涯癒りゃしません」

「待て待て」

平次は考え込みましたが、いきなり畳の上に坐って、自分の膝を見詰めております。

「親分」

「跛もあんなひどいのになると、両膝が揃わないのが本当だね」

妙なことを言い出します。

「…………」

「宗太郎は歩く時は右の足が二寸も短いくせに、坐った時両膝の揃うのはどうしたわけだ」

「親分」

ガラッ八は、平次の気違い染みた様子が気味が悪かったのです。

「八、帯を解け」

「大丈夫ですか、親分」

「気が違ったと思うか、安心しろ、俺は今跛を拵えてみせるから」

八五郎に解かせた帯で、自分の右足の太腿を縛ると、その両端を左の肩へ掛けて、帯のあたりで固く結びます。何の事はない、自分の左の肩へ、自分の右足を釣った形、そのなりでそろそろと歩き出すと、