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ぜにがたへいじとりものひかえ

銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌

野村 胡堂

Read 銭形平次捕物控(一)平次屠蘇機嫌 (ぜにがたへいじとりものひかえ) by 野村 胡堂 (のむらこどう) in Japanese with furigana. JLPT N2. Tap a word for the meaning.

N2 · advanced · modern kanji and kana · 156,866 characters · 318 screens

Aozora Bunko

「有難い、なんだって早く気が付かなかったんだろう」

平次の喜びは法外でした。八五郎に墨を磨らせて、サラサラと書いた手紙が四本。

「お静、いつもの使屋に頼んで、大急ぎでこれを宛名のところへ届けてくれ、――どこから持って来たか、言っちゃならねえ、しっかり口止めするんだよ」

「ハイ」

まだ若くて美しい女房のお静は、四本の手紙を持って大急ぎで出かけました。

「親分、何の手紙で?」

「何でもないよ、――身に覚えのない者は、あれを見ても何とも思わないが、脛に傷持つ奴は、あわてて飛んで来る禁呪が書いてあるのさ」

「ヘエ――」

「これでよし、晩までは暇だ、――八、一杯付き合おうか」

「冗談でしょう、親分」

「大真面目さ、今夜こそ命のやり取りだ。まだ日が高い、さア」

平次の持出した猪口、ガラッ八は辞みもならず、冷で注いでキューッとやります。

「親分、これや一体何の禁呪で――、長いこと、一緒に仕事をしているが、捕物に出かける前に、酒なんか飲んだことはありませんぜ」

ガラッ八は盃から顔を挙げます。

「まアいいやな、こんな稼業をしていると、いつどんなことで別れになるか知れねえ」

「いやになるぜ、親分」