Japanische Klassiker mit Furigana
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みみずのたわこと
みみずのたはこと
徳冨 健次郎
Lesen Sie みみずのたはこと (みみずのたわこと) von 徳冨 健次郎 (とくとみけんじろう) auf Japanisch mit Furigana. JLPT N2. Tippen Sie auf ein Wort für die Bedeutung.
N2 · Fortgeschritten · moderne Kanji und Kana · 265.437 Zeichen · 530 Bildschirme
五
稀に玉川行の自動車が通る。年に幾回か人力車が通る。道は面白い。座って居て行路の人を眺むるのは、断片の芝居を見る様に面白い。時々は緑の油箪や振りの紅を遠目に見せて嫁入りが通る。附近に寺があるので、時々は哀しい南無阿弥陀ァ仏の音頭念仏に導かれて葬式が通る。
街道は此丘を東に下りて、田圃を横ぎり、また丘に上って、東へ都へと這って行く。田圃をはさむ南北の丘が隣字の船橋で、幅四丁程の此田圃は長く世田ヶ谷の方へつゞいて居る。田圃の遙東に、いつも煙が幾筋か立って居る。一番南が目黒の火薬製造所の煙で、次が渋谷の発電所、次ぎが大橋発電所の煙である。一度東京から逗留に来た幼ない姪が、二三日すると懐家病に罹って、何時も庭の端に出ては右の煙を眺めて居た。五月雨で田圃が白くなり、雲霧で遠望が煙にぼかさるゝ頃は、田圃の北から南へ出る岬と、南から北へと差出るとが、宛ながら入江を囲む崎の如く末は海かと疑われる。廻沢と云い、船橋と云い、地形から考えても、昔は此田圃は海か湖かであったろうと思われる。
五
谷から向うの丘にかけて、麦と稲とが彼の為に一年両度緑になり黄になってくれる。雑木林が、若葉と、青葉と、秋葉と、三度の栄を見せる。